第20章 【ソシテワタシハ】
「小宮山さん、聞きたいことがあるんだけど」
放課後、教室に残る生徒もまばらになった頃、帰宅準備をしながら声をかけられる。
聞きたいこと?委員のことかな?そうのんきに顔を上げると、そこには意地悪そうな顔と怖い顔をした女の子たちが立っていた。
え?私、何かしたっけ?なんて内心ちょっとドキドキしながら、何か?そう冷静を装って答えると、朝、不二くんと何話してたの?と中心的存在の1人が静かに口を開いた。
あー……色々ありすぎてすっかり忘れていたけれど、そう言えば、朝、それでクラスの女子に騒がれたんだっけ……そう思い出して心の中で頭を抱える。
なんて言い訳しようかなぁ……?、本当のことは当然言えないし、だからと言って私と不二くんの間にみんなに話せる接点もないし……そう黙り込んでしまうと、何とか言いなさいよ!と女の子たちは声を荒げた。
「……あなた達には関係ないと思いますが?」
こう言ったら余計に怒らせると分かってはいても、結局、そんな言い方しかできなくて、案の定、その子達は真っ赤な顔をしてフルフルと拳を振るわせる。
「小宮山さんを生徒会執行部に勧誘したんだよ」
噂をすれば何とやら、突然彼女達のむこうから、話題の不二くんの声がして、女の子達が焦った顔をして振り返った。
私も不二くんが突然有りもしないことを言い出したから、別の意味で焦ったんだけど。
でもすぐに、ああ、不二くん、私のこと助けてくれているんだなって理解して、その事はお断りしたはずですが?そう話を合わせる。
不二くんは生徒会執行部に入っていて、彼からの勧誘は今までなかったけど、生徒会長や他の役員からの勧誘は定期的に受けていたから、その辺はスムーズに話に入っていくことが出来た。
「そこを何とか考え直してくれないかな?もうすぐ3年生も引退で人手が足らなくなるんだ」
「そうは言われましても、私には荷が勝ちますから」
他を当たって下さい、そう言って帰り支度を済ませると、失礼します、と教室を後にした。