第20章 【ソシテワタシハ】
「つまり結局は英二が、小宮山さんの気持ちを言い訳に、自分の欲望のままにレイプした挙げ句、盗撮した動画で脅迫し精神的に追い詰め、冷静な判断が出来なくなった彼女は自分を見失い、僕にあんな行動をとったと言うわけだね?」
ずっと黙ったまま聞いていた不二くんのその言葉にハッとして少し扉を開ける。
上から英二くんが慌てて飛び降りてきて、必死に謝っているのがわかる。
不二くんのその指摘は英二くんの話を聞いただけでは全くその通りで、的確に要点を纏め真実のように聞こえてはいるけれど、英二くんだって認めてはいるけれど、でも違うもの、そこに私の気持ちは入っていないもの!
どうしよう、盗み聞きしているのバレちゃうけれど、やっぱり黙ってなんかいられない!!
必死に謝る英二くんの声と、犯罪者と非難する不二くんの言葉を、私は意を決して不二くんの名前を呼び、それからその扉を押さえる手に力を込めて重い扉を押して開けて、屋上へと足を踏み出す。
私が聞いていたことに驚く彼らに謝ると、英二くんが駆け寄ってきてくれて、それからもう一度ごめんなって謝ってくれる。
そんな英二くんにもう気にしてほしくなくて、大丈夫、と笑顔を作り、それから不二くんに英二くんのことは私の意志だから責めないでほしいことと、私がしてしまった自己中心的な行為への謝罪をする。
私が出来ることはここまでだよね……この後の2人の会話も気になるけれど、それは私が聞いて良い話ではないし、それを聞く覚悟も私にはまだないもの。
そして私はもう一度不二くんに念を押し、2人にぺこりと頭を下げて屋上を後にした。
まっすぐ教室に戻らずに、なんとなく英二くんと関係を持った場所を回りながら戻ると、結局学校中を歩き回ることになり、思わず苦笑いしてしまう。
時間ギリギリになって教室に戻ると、もっとギリギリになって戻ってきた英二くんが、また、コッソリ作ったブイサインで私の机に触れてくれた。
よかった、そう安心して胸をなで下ろすと同時に、そんな彼の気遣いが嬉しくて、慌てて俯いて、にやける口元を髪の毛で必死で隠した。