第19章 【フジトエイジ】
「それじゃ、英二は一生、独りで生きていくつもり?」
そう言う不二に、んー……とちょっと考えて、家族が心配しだしたら、そん時は適当な女捕まえて彼女にするし、そのうち結婚もするかもね、そう答える。
家族に心配は掛けられないからさ、そう言って笑うオレに、それは小宮山さんじゃダメなの?そう不二が問いかける。
ほんと、不二のやつ、どこまでオレと小宮山くっつけようとしてんだよ、そう、苦笑いをしながら、本気のやつには悪いじゃん?似たような価値観の女を見つけるって、そう言って空を仰いだ。
すると不二は、悪いと思う気持ちはあるのに、このまま小宮山さんとの関係を続けるんだ?そうため息をつくから、はは、痛いとこつくね、そう笑って首をすくめる。
「……オレだってやめようって言おうとしたさ、でもあんな顔されちゃなんも言えないって……」
もう一度、小宮山に終わりを告げようとしたときの顔を思い出し、ふーっとため息をついて苦笑いする。
「小宮山、そんでもいいって泣くし、それに……」
やっぱ、キモチイイし?そう言って舌を出して笑うと、不二は呆れたような顔をして首を横に振った。
「それともなに?オレが小宮山に好きだって言えば、不二はそれで満足なのかよ?」
そう問いかけるオレに、それは……そう不二は言葉を濁す。
オレ、確かに思ってもないこと口にするの得意だけどさ、流石にんな残酷なこと言えないって、そう言ってもう一度空を仰ぐと、さっき見つけた飛行機雲が、ぼんやりと滲んで消えかかっていた。
「大丈夫だって、コレからは出来るだけ泣かせないよ、もう無理強いもしないしさ」
大切にするって……セフレとしてだけどさ、黒塗りの卒業アルバムをまた思い出し、痛む胸をそっと押さえて呟くと、ふーっともう一度不二はため息を落とした。