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【テニプリ】闇菊【R18】

第19章 【フジトエイジ】




「英二、あの子、覚えてる?」


少し考え込んだ不二が徐にそう口を開く。
あの子って誰さ?って聞くと、ほら、卒業式の日の子、そう不二が答える。
あー、あのクソ女ねって呟くと、英二、そう不二が怖い目で睨むから、分かってるってと首をすくめる。


中学の卒業式の日、部活のみんなで打ち上げ中に偶然逢ったセフレの女。


彼女面してウザイから思わずみんなの前で本性出しちゃって、消えろよ!って追っ払ったら、別れたくないって大泣きされて、誰もテメーなんかとつき合ってねーよ、クソ女!って怒鳴りつけたら、手塚と大石からすんげー怒られた。


「あの時、英二、手塚にグラウンド一万周させられたよね。もし、小宮山さんのことを知れたら一億周くらいさせられるんじゃない?」


そういう不二の言葉に、大丈夫、そん時は小宮山がまた庇ってくれるから、そう言って苦笑いすると、不二は呆れた顔をして笑った。


「んで、あのク……女がどーしたって?」


そう不二を見上げて言うと、小宮山さん、ちょっと似てるよね?そう不二が言うから、は?って思ってどこが?って聞くと、思い詰めた感じがさ、そう不二は意味深な笑顔で答える。


小宮山とあのクソ女が……?
んー……とちょっと悩んで、そうかもね、と答える。


普通は過去の女なんて大抵思い出せないけどさ、あのクソ女のせいで春休み中グラウンド走らされたから、あいつはなんとなく覚えている。
顔や性格はともかく、関係を終わらせようと思ったときに、大泣きされた所は同じかもね。


「あの子は嫌いになって、小宮山さんは思いやる、その違いはなんだろうね……?」


そう言ってクスクス笑う不二に、あーっもう!と立ち上がり、そんなに不二はオレに小宮山を好きだって言わせたいのー?そう言いながら不二の顔を指差して頬を膨らませる。


たく、不二のヤロー、そう後頭部で腕を組んで空を仰ぎながら、朝の小宮山の思い詰めた様子を思い出す。


あのクソ女と小宮山の違いは、だから同情と罪悪感だって、それ以外なんてなんもないよ、そう小さい声で呟いて嘲笑った。

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