第19章 【フジトエイジ】
「で、英二は、小宮山さんのこと、好きなの?」
その当然でるであろう不二の質問に、首をすくめると……好きじゃない、そう目を伏せて答える。
「……不二だって知ってんじゃん?オレがこんな理由さ」
「それと人を好きになるかどうかは関係ないだろ?」
そりゃそうだけどさ……そう言って空を仰ぐと、飛行機雲が真っ直ぐに延びているのを見つける。
どこまでも真っ直ぐで、でも儚くて、まるで小宮山みたいだな、何となくそう思った。
「しゃーないじゃん、オレ、男と女の愛情なんて信じらんないもん。人を好きになる気持ちだってわっかんないし」
「分からないなら、今がその分かるときなんじゃないの?」
そう言う不二に、なんだよそれ?って笑うと、そうすれば丸く収まるじゃない?そう不二は笑顔を見せるから、簡単に言ってくれんね、とオレも苦笑いをする。
好きじゃないし、これからも絶対なんないよ、小宮山にもそうはっきり言ったし、そう言って空に視線を向けたまま呟くと、ふーっとため息をついた不二も空を見上げる。
そう、愛情なんて分かんないし、分かりたいとも思わないよ。
男と女の間にあんのは、ただお互いの身体を求める欲望だけで十分なんだって……
「僕には英二が小宮山さんに対して、少しは愛情を感じているように見えたんだけど?」
愛情……?そんなんじゃないよ、そう言って鼻で笑う。
ふと小宮山の部屋で見た卒業アルバムを思い出し、そっと痛む胸を押さえる。
「この気持ちは……同情、そんで生まれた罪悪感」
そう言うオレに、同情?信じられないな、そう言って不二が目を見開く。
それって英二が一番キライなことじゃないの?そう言って笑う不二に、はは、そだね、そうオレも俯いたまま笑った。