第19章 【フジトエイジ】
「つまり結局は英二が、小宮山さんの気持ちを言い訳に、自分の欲望のままにレイプした挙げ句、盗撮した動画で脅迫し精神的に追い詰め、冷静な判断が出来なくなった彼女は自分を見失い、僕にあんな行動をとったと言うわけだね?」
そう下から黒いオーラを発しながら、フフフッと笑い声が聞こえ、ギクッと身体を震わせると、慌てて飛び降りる。
顔の前で両手を併せて、だからゴメンって、そう不二に頭を下げる。
「僕に謝ったって仕方がないだろう!」
「だから小宮山にもちゃんと謝ったって~!」
そう何度もゴメンってーと繰り返し謝ると、不二が、親友だと思っていた友人が実は犯罪者だったとはね、そう言ってフーッとため息をつく。
「……あの、不二くん……」
「小宮山!?」
「小宮山さん!?」
突然そーっと入り口のドアが開き、小宮山が顔を覗かせる。
驚いてそちらを振り向き、小宮山を呼ぶ声が不二と重なり響きあう。
「小宮山、今の話、聞いてた……?」
急いで小宮山の元に駆け寄り、そう恐る恐る声を掛けると、気まずそうな顔をした小宮山がコクンと頷き、ごめんなさい、そう謝る。
こんな話、小宮山にとっては聞いていて気持ちがよい話題でないことは確かで、ごめんな、そう今日何度目かの謝罪をすると、小宮山はフルフルと顔を横に振って、分かってることだから平気です、そう無理に笑顔を作った。
「あの、不二くん、英二くんのこと責めないで下さい。全部、私の意志ですから」
そう小宮山は不二をまっすぐ見つめてそう話す。
なんと言っていいか戸惑っている不二に、もう一度、私の意志なんです、そう力強く繰り返す。
「私、自分を見失ってなんかいません。確かに最初は悩みましたけど、今は良かったって思ってます。だから、英二くんは犯罪者なんかじゃありません。そんな風に責めないで下さい」
そう毅然とした態度で不二を見つめる小宮山を見ていると胸が苦しくなる。
なんでオレなんか庇うんだよ、そう思って下唇を噛んだ。