第115章 【ミライへ・・・】
大変といえば、私と英二くんの結婚は想像以上に大変で、私はともかく、英二くんは女の子に恋されてナンボのアイドルだから当たり前なんだけど、事務所の反対は相当なもので・・・
「・・・これは・・・?」
「ご不満ですか?そうですよね、【ミステリアスな女流作家の麻倉マコト】さんにとっては、これくらい端金でしかありませんよね。」
英二くんと結婚の約束をした数日後、呼び出された事務所の一室で、目の前に白い封筒を差し出された。
中身を確認すると、0が沢山並んだ小切手・・・
ソラの養育費との名目の、いわゆる手切れ金と思われるそれを断ると、全く、まだその辺のファンに手を出された方が簡単なのに・・・、そう英二くんの事務所社長はため息をついた。
もちろん、端金なんて金額ではなかった。
でも、英二くんとお金を天秤にかけるつもりは毛頭なかった。
ソラからまた父親を奪うなんてできるはず無かったし・・・
ただ、このまま英二くんとの関係を続けると、英二くん本人も、私が契約している出版社も困ることになると言われると、どうしたらいいか分からなくなって・・・
「もしもし、英二くん?、どうしたんですか、こんな時間に・・・」
英二くんと別れるという選択肢は出せないまま一度話を持ち帰った数日後、突然私の携帯がなって、ディスプレイをみたら英二くんで、英二くん忙しいはずなのに通話なんてどうしたのかな?と不思議に思いながら電話を受けた。
『オレに任せて!璃音はなんも心配しなくていいかんね!』
「え?心配しなくていいって、それってどういう・・・」
意味ですか?、そう聞き終わらないうちに、すぐに切れてしまった通話・・・
どういう事?そう疑問に思いながら観た英二くん出演の生放送・・・
『ファンのみんなに報告があります!オレ、今度、結婚することになりましたー!!』
飲んでいた紅茶をぶはっと吹き出した。
お母さん、汚い、そんなソラのツッコミに、いや、だって・・・そう慌てて口を拭いた。