第114章 【アノヒノヤクソク】
「璃音のとーちゃんとかーちゃんは、快く許してくれたってのに、うちの家族ときたらさぁ・・・」
「でも、最初だけですぐに喜んでくれたじゃないですか。ソラのこともとても可愛がってくださって・・・」
まぁ、肝心のソラは相変わらず人見知り全開で、ずっと英二くんにくっついたまま家庭の医学を読んでいただけなんだけれど・・・
「・・・ソラくん、顔は英二そっくりだけど、性格は璃音ちゃんに似たのよね?、英二、本なんて全く読まないもの・・・確かに二人の子だわ・・・」
黙々と家庭の医学を読み続けるソラを眺めながら、英二くんの御家族たち皆さんがそう口にした。
私としては、せっかく連れてきたのに愛想笑いすら見せず本に没頭している子で、申し訳ない気持ちでいっぱいだったけど・・・
でも、普段のソラを思ったら、それも当然かもしれない・・・
何回かお会いするうちに、少しは打ち解けるとは思うんだけど・・・
カンカンと鳴る警笛音。
自宅に向かう途中の踏切で立ち止まる。
赤いランプが反射する英二くんと、彼におんぶされながらスースーと寝息を立てているソラを眺める。
あんなに人見知りなソラが、英二くんにだけは最初からピッタリくっついて、もうずっと離れないなんて・・・
ソラ・・・一度も父親のことを口にしたことは無かったけれど、本当はずっと我慢していたのかな・・・?
そう思うと、一人で産み育てるなんて自分勝手な決断をしたことを本当に申し訳なく思う。
ごめんね、ソラ・・・
そっと英二くんそっくりなその外ハネの髪を撫でる。
「・・・どったの?」
「あ、いえ・・・ソラが英二くんを受け入れてくれて本当に良かったって・・・だからソラにも申し訳なかったなって・・・」
そう思っていたところなんです、そう言ってもう一度ソラの髪を撫でる私を、英二くんが優しい眼差しで見守ってくれる。