第114章 【アノヒノヤクソク】
「いいねー、ネコ丸、英二くんに抱っこしてもらって。」
隣に座る璃音と顔を見合わせて笑い合う。
こうしていると、高校生のあの頃に戻ったみたいで、懐かしさで胸がいっぱいになる。
ネコ丸のお陰ですっかり雰囲気が和むと、だまって向かい側に座って本を読んでいたソラが、オレの前に歩み寄ってきて・・・
どした?、そう顔を覗き込んで声をかけると、ソラはネコ丸を抱き上げ璃音へと渡した。
ソラ・・・?、そう首を傾げるオレに構わず、ソラはオレの膝に腰掛ける。
もう一度、璃音と顔を見合わせる。
それから、璃音のかーちゃんとも・・・
「ソラ、ネコ丸が羨ましかったの?」
「・・・別に・・・」
あぁ、ソラ、ありがとう。
こんなオレに甘えてくれて・・・
「ソラ~、大好きだにゃー!」
「・・・やめてください、読めません。」
沸き起こる笑い声。
ここにオレがいることが当たり前のような心地良さ・・・
「ただいま・・・ずいぶん、賑やかだね。」
帰宅した璃音のとーちゃんがその様子に目を見開いて、それから穏やかな笑顔を見せる。
あ・・・、そう慌てて立ち上がろうとして、そのままでいいよと制されたから、ペコリと頭だけを下げる。
「ごめんなさい、気が付かなくて・・・早かったのね。」
「そりゃ英二くんが尋ねてきた、なんて言われたら、仕事どころじゃないからね。」
サッと脱いだ上着と鞄を璃音のかーちゃんが受け取り片付ける。
その自然な気遣いに、璃音の細やかな心遣いを思い出して微笑ましく思う。
それにしても、うー、緊張する・・・
さっきまでソラやネコ丸のお陰でリラックスしていたけれど、やっぱり璃音のとーちゃんと向かい合わせに座ると胸がバクバクして・・・
「あ、あの・・・オレ・・・じゃない、えっと・・・」
とにかく、謝んなきゃ・・・
璃音を妊娠させた上に今まで放っておいたことも・・・
そんで殴られそうになったらケツにしてもらって・・・
って、流石にそこまで言ったらふざけてるって思われるかな・・・