第114章 【アノヒノヤクソク】
そんなオレの必死の訴えに、璃音が信念を変えてくれた。
きっとソラの一言が大きかったんだと思う。
オレだって、ソラがオレを受け入れてくれないなら、直ぐに璃音と寄りを戻そうとは思わないけれど・・・
だからって、璃音を諦める気はさらさらないけど!
・・・だけど、母親の恋愛を受け入れられない子供の気持ちは、オレが誰よりわかっているから・・・
ガキん時のオレとソラでは、その背景は色々違うけれど、ソラにとってはそんなのカンケーないだろうから・・・
だから、ソラがオレの手を握ってくれて凄く嬉しかった。
オレのことを「お父さん」と呼んでくれてすげー感動した。
オレをお父さんと認めてくれて、オレ以外のお父さんなんて嫌だって言ってくれて、心から安心した。
ソラを肩車しながら、初めてとーちゃんに肩車しもらったときのことを思い出した。
あん時はすげー嬉しかったくせに、どうやって喜んでいいかわかんなくて、素っ気ない反応しか出来なくて・・・
チューの時もそうだったけど、ソラの反応もイマイチなのは、あの時のオレと同じ理由ならいいのにな・・・なんて、ソラの重みを両肩に感じながら璃音の横を歩ける幸せを噛み締めた。
「・・・お母さん、ただいま・・・突然だけど・・・英二くん・・・」
懐かしい璃音の家に着くと、玄関で迎えてくれた璃音のかーちゃんは当然だけどすごく驚いていて、それから口をパクパクさせた。
ずっと肩車していたソラを玄関に下ろすと、帽子をとって深々と頭を下げる。
すげー緊張する・・・
璃音のかーちゃんとは高校生の時に何度か顔を合わせているけれど、とーちゃんとは初対面だし、娘を持つ父親の気持ちはきっと特別なものがあるに違いなくて・・・
今更何しに来た!って怒られるかもしんない・・・
そう思ったら、心臓がバクバクして口から飛び出しそうになる。
テニスで大きな大会に出たって、仕事で何万人のファンの前で歌ったって、全然へーきなのに・・・