第114章 【アノヒノヤクソク】
「・・・お母さん・・・」
東屋でソラの名前を呼んでいた璃音がこちらを振り向いた。
ドキンと大きく心臓が跳ねた。
懐かしい・・・大人っぽくなった・・・
もともとキレイだったけど、より一層・・・
慌てて駆け寄ってきた璃音がソラを抱きしめる。
連れてきたのが(本当はオレが連れてきてもらったんだけど)、オレだって気が付かない・・・
すげー寂しいけど、ソラしか目に入ってないんだよな・・・
立派に母親やってんだな・・・そう思うと胸の辺りが熱くなる。
「すみません、ちょっと目を離した隙に・・・ありがとうございま・・・」
顔を上げた瞬間、璃音がオレに気がついた。
あぁ、本当に璃音だ・・・
驚いて動けないでいる璃音の名前を呼んだ。
その瞬間、慌てて逃げ出したから、急いでその腕を掴んだ。
絶対逃がさないもんね!
ずっと探し続けてきたんだ、ずっと・・・
璃音は何年経っても相変わらずで、ツンツンして誤魔化そうとしてみたり、焦ってとんでもないことを口走ってみたりして、本当に面白い反応で・・・
懐かしすぎて、それだけで泣きそうになる。
更に逃げようとする璃音をギュッと抱きしめた。
ソラを潰さないように、だけど絶対逃がさないように・・・
嫌だ、絶対に・・・、また後悔し続けるなんて、もう二度と!
だけど、璃音は頑なで・・・
ソラがオレの子だって認めたのに、それでもやっぱり頑なで・・・
璃音が一度決めたことを簡単に覆さないことは分かっているけれど、本当に相変わらずで・・・
「そんなの関係ないっ!オレがアイドルになったのは璃音に今のオレを見ていて欲しかったからだから!璃音と一緒にいられないなら、アイドルなんか今すぐ辞めるっ!」
オレのアイドルの立場を気にしてる璃音に声を荒らげた。
そんな馬鹿な話があるもんか!
璃音に誇れる人になって欲しいと言われて、必死に今までやってきたんだ!
アイドルは楽しいけれど、楽なことばかりじゃなくて、我慢しなきゃいけないことも多いけれど、璃音の為に頑張ってきたのに・・・