第113章 【オトウサン】
「・・・Kiss?」
何度目かのキスの途中で、そうソラが問いかけたから、慌てて英二くんから距離をとる。
何とか誤魔化そうと思ったけれど、自分でも分かるこの真っ赤な顔では、何を言っても無駄な気がして・・・
だったら、英二くんに助けを求めようとしたけれど、英二くんも同じように赤い顔をしていて・・・
「・・・別に、Kissなんてただの挨拶じゃん・・・あぁ、挨拶じゃない方?」
あぁ、英二くん、ごめんなさい、私、育てかたを間違ったようです。
本当に5歳児らしからぬソラの態度に、頭を抱えてため息をついた。
「そうだぞー、ソラにもチュー!」
「・・・やめてください。」
にゃはは〜と笑ってソラをひょいと抱えた英二くんが、ソラの頬にキスをすると、あろう事かソラは拳でその頬をグイッと拭う。
ショックを受けて落ち込んでしまった英二くんに申し訳なく思ったけれど、でもプイっとそっぽを向いたソラの口元が微かに緩んでいるように見えて・・・
「英二くん、本当はソラ、嬉しかったみたいですよ?」
「マジ?やったね!、じゃあ、今度は肩車にゃー!!」
高いだろー?、そう得意げに言う英二くんに、別に・・・、そうまた素っ気ない返事をしたソラだったけど、やっぱり本当は喜んでいて・・・
ソラが英二くんを断固拒否しないことに、よかった・・・そう胸を撫で下ろす。
「なぁ、ソラ、お父さん、お母さんにプロポーズしてもいいかにゃー?」
「いきなりですね・・・、僕よりお母さんに聞けばいいじゃないですか・・・」
「まずはソラの気持ちが大事なの!まぁ、嫌だって言われても璃音を諦めるつもりはないけどねー!」
「・・・僕に聞く意味ないじゃないですか・・・」
英二くんにそう言って貰えることはもちろん嬉しいんだけど、その言葉は英二くんの子ども時代から来ているのは明らかで・・・
どんどん変わっていく「パパ」への嫌悪感を忘れられないからで・・・