第113章 【オトウサン】
それを思うと、英二くんの心が心配になってしまう。
だけど、その笑顔は全く曇りがなくて、それは嘘のない本物に間違いなくて・・・
英二くん、本当に乗り越えたんだね・・・
テニスが出来るようになったんだもんね・・・
「・・・あなた以外の『お父さん』なんて嫌ですよ・・・」
ボソリとソラが呟いた一言・・・
英二くんと顔を見合わせて、それから嬉しくて涙が溢れる。
「そんじゃ時間ないし、さっさといっくよん!」
「え?行くってどこへ・・・?」
「璃音の家!挨拶しなきゃなんないし、オレん家にも・・・あと璃音と話したいこともたーくさんあるし、ソラとも仲良くなりたいし・・・うー、オレ、明日までしかオフないんだよなぁ・・・時間が足りなーい!!」
挨拶って、そんな突然・・・
本当、英二くんは相変わらず直感型なんだな・・・って、そんな変わらない彼を嬉しく思う。
「あっ、でも肩車したままそちらに行ったら目立ちますよ!大丈夫ですか?」
「ああっ!・・・でも隠すの嫌だから別にいっか!」
「・・・本当にいいんですか?事務所と揉めて万が一違約金請求されたら・・・もしかしたら億単位になるんじゃないですか?」
「マジで・・・?、璃音、そっちの茂みん中にオレの帽子あるからとってきて・・・あと雑誌と・・・」
芸能界のことは全く分からないけれど、私の仕事も出版社やスポンサー様方と事細かな契約事が決められている。
芸能人なら尚更なんじゃないかな・・・?
ところで、そっちの茂みって・・・もしかして、もしかしなくても、あの茂みよね・・・?
それは当然最初に英二くんが女の人と関係を持っていたところを偶然目撃したところで、ここですか?、そう苦笑いしながら指さすと、英二くんも同じように苦笑いする。
でも、まぁ、ここも懐かしいな・・・
あの時のことがなければ、英二くんと私が接点を持つこともなかっただろうし・・・
英二くんとの思い出の場所で、嫌な場所なんてひとつも無い。
場所だけじゃなく、どんな辛い経験も、英二くんとの大切な軌跡だから・・・
全部・・・全部・・・
これからも、ずっと____