第113章 【オトウサン】
「本当にゴメン・・・これからは、オレがふたりを支えるから・・・」
その英二くんの言葉にハッとして顔を上げた。
慌ててソラを抱える手に力を込めて走り出した。
けれど、結局、英二くんに離しては貰えなくて、動けなかったんだけど・・・
どうしよう・・・英二くんにそんな迷惑かけれないのに・・・
なんとか、この場を切り抜けないと・・・
「べ、別にそんなこと望んでいません!私はひとりで平気です!今までも・・・これからだって!」
本当はすごく心細かった。
ずっと、幸せそうな夫婦を見る度に、羨ましくて仕方がなかった。
ひとりでの子育てが辛いんじゃない・・・
英二くんがいないのが、一緒に喜びも悩みも分かち合えないのが、すごく寂しくて・・・
いくらお父さんやお母さんが一緒に育ててくれたって、英二くんの代わりにはならなくて・・・
でも、弱気になる度に、ひとりで産み育てるって決めたでしょ!と自分自身に言い聞かせた。
「・・・オレが、ダメなんだ・・・璃音がいなきゃ、オレが・・・」
ずっと、オレの傍にいて・・・?、英二くんのそのか細い声に、ぐらりと心が揺れた。
ダメ、絆されては・・・そうなんとか気持ちを奮い立たせた。
「もう、いーじゃん、お母さん、素直にお父さんに甘えれば?」
ずっと黙っていたソラが、ポツリとそう呟いた。
驚いて視線を向けると、ソラがしっかりと英二くんのシャツを握りしめているのに気がついて・・・
・・・ソラ?
「お母さん、ずっとお父さんのことが大好きじゃん・・・お父さんもお母さんのことを好きなら、なんの問題があるの?」
それは・・・ソラには分からないかもしれないけれど、色々あるでしょ・・・
勝手に黙って産んで、今更、はい、そうですかって、英二くんに甘えるわけにはいかないし・・・
そもそも、英二くんは今をときめく人気アイドルなんだもん、きっとこの間の雑誌のインタビューだって相当大変だったんだと思う・・・
ましてや隠し子がいるなんて・・・