第112章 【ソラ】
「璃音!!!璃音!!!」
踏切が開いて車が走り出して、私を探す英二くんとすれ違った。
見つからないように、お母さんの膝に顔を埋めて泣き崩れた。
「・・・今なら、間に合うわよ?」
そのお母さんの言葉に、首を横に振った。
ここで引き返す訳にはいかないから・・・
もう、前に進むだけだから・・・
「・・・良かったわね、ちゃんと英二くんにお別れが出来て・・・」
うん、良かった・・・
最後に、ちゃんとお別れ出来たから・・・
素敵な思い出を貰えたから・・・
「・・・すみません、このまま空港に向かってください。」
もう、お母さんは何も言わなくて、ただゆっくりと私の肩を擦りながら、そう運転手さんに声をかけた。
もう大丈夫だよね・・・?、そう英二くんに見つからないことを確認すると、身体を起こし空を眺めた。
分厚い雲の隙間から光が降り注いでいて・・・
そこから見える眩しい蒼空に目を細めた。
ずっと英二くんがひとりで眺め続けてきた空・・・
英二くんと付き合うようになってからは、ふたりで眺めてきた・・・
遠く離れても、今度はこの子とふたりで、これからも見上げ続けるから・・・
英二くんは、真っ直ぐに未来へ向かって歩き続けて___?
瞬きと同時に、ひとしずくの涙が頬を伝った。