第112章 【ソラ】
もう大丈夫・・・英二くんはひとりじゃないから・・・
暖かい御家族と、かけがえのない仲間に支えられているから・・・
どうか、幸せに・・・
くるりとふたりに背中をむけた。
再度、踏切が上がる前に、姿を消さなければならないから・・・
急がないと、私の足ではすぐに追いつかれてしまうから・・・
「小宮山、行っちゃダメだ!!小宮山・・・小宮山・・・璃音!!!」
初めて英二くんに名前を呼ばれて、思わず足を止めた。
「璃音、愛してる・・・!!!」
英二くんのその言葉に、涙が溢れた。
それと同時に、今までの英二くんと過ごした沢山の日々の記憶・・・
色々、辛いことも沢山あったけど、それ以上に幸せだった。
大好きで、大好きで、自分ではどうにも出来ないほど大切な人に、こんな風に愛を叫んでもらえるなんて・・・
大丈夫・・・その言葉だけで、誇りを持って生きていける・・・
あなたはお父さんとお母さんに愛されて生まれてきたよ、そうこの子に自信を持って言える・・・
数ヶ月の短い間だったけど、英二くんには、一生分の愛情を注いで貰えたから・・・
「私も、愛してる___」
きっと私の声は、電車の騒音にかき消されて英二くんには届かなかっただろうけど、それでもしっかりと想いを声にした。
そしてそのまま、その場にうずくまって大声を上げて泣き叫んだ。
こんな場所で泣いている場合ではないのに・・・
電車が通り過ぎたら、すぐに見つかってしまうのに・・・
「璃音!」
踏切待ちをしていたタクシーのドアが開いて、お母さんが顔を出した。
フラフラと立ち上がると、なんとかその車に乗り込んだ。
「・・・長旅の前にあまり歩かせるのも・・・と思って、英二くんのお宅に迎えに行くところだったの・・・」
ありがとう・・・お母さん・・・
本当に、来てくれてよかった・・・