第112章 【ソラ】
「・・・英二くん・・・」
まさか、ここで会えると思わなかった。
本当は時間もないし、真っ直ぐ英二くんのお宅に行こうと思ったんだけど、どうしてもいつもの東屋が気になって、フラフラと引き寄せられた。
そこには、空を眺めている英二くんがいて・・・
それは、まるで最初に英二くんに惹かれたあの時のようで・・・
ギュッと心臓が締め付けられて、切なくて涙が滲んでしまった。
慌ててお腹をさすり、首を横に降った。
私のかけた声に英二くんがハッとして振り返った。
深々と頭を下げて、笑顔を向けた。
最後だから・・・笑って別れようって決めたから・・・
この子とふたりで、強く生きていけるように必要な別れだから・・・
お母さん、頑張るから・・・
決心が鈍らないように、英二くんの前を歩いた。
英二くんの私への想いに、気が付かない振りをした。
さすがに抱きしめられると、心が揺らいで辛かったけれど・・・
でも、いつまでも泣いている訳にはいかないから・・・
警笛がなった途端、今しかないと思った。
自分でも信じられないくらい危険な行動に出た。
私のいたって普通の運動神経では、かなり無謀だったけれど・・・
英二くんにも心配をかけてしまったけれど・・・
英二くんの呼び止める声を振り切って、なんとか踏切を渡って振り返ったら、思いがけず周くんがいてもっと動揺した。
まさかこのタイミングで周くんとも顔を合わせることになるなんて・・・
でも、私を追いかけて今にも踏切に飛び込もうとしている英二くんを必死に止めてくれたことがわかって、手紙でお願いしたように、これからも英二くんを支えてくれることが分かって心から安心した。
それから、傷つけてしまったことへの罪悪感で、深々と頭を下げた。