第112章 【ソラ】
美沙と周くんに手紙を書いたのと同じように、最初は英二くんにも手紙を書こうと思った。
だけど、どうしても英二くんには、最後にもう一度会ってサヨナラを言いたくて・・・
すごく勝手なんだけど、最後に英二くんと会ったのが、せっかく謝りに来てくれた英二くんを周くんと突き放したあの瞬間だなんて、そんなの辛すぎて・・・
英二くんが前を向いて歩き続けることが出来るように・・・
私が胸を張ってこの子を育てていけるように・・・
もう、英二くんは私の事なんか、忘れているかもしれないけれど・・・
だけど、もう連絡先も削除してしまっていたから連絡をすることは出来なくて、だから、直接英二くんの自宅に行くしか方法はなくて、でもそんな勇気なんかとてもなくて・・・
思ったより悪阻が酷かったこともあって、何も出来ないまま、引越しする日がどんどん近づいてきてしまって・・・
「璃音、そろそろ出る?途中で具合が悪くなると困るし、余裕もって早めに・・・」
「あ、あの・・・お母さん、お願いがあるの・・・少しだけ出かけてきてもいい?」
結局、英二くんに会いに行けないまま出発の日になって・・・
いよいよもう後がないという所で、何とかお母さんにそう切り出した。
「出かけてきてって・・・そんな余裕ないわよ?」
「一時間でいいの!ちょっとだけ・・・これ、返さないといけなくて・・・英二くんのお姉さんに・・・」
時間が迫ってきて突然そんなことを言い出した私に、お母さんは凄くびっくりしていて、当然だけどすぐに「うん」と言ってくれなかったんだけど、紙袋に入れたお姉さんのセーラー服を見せると、あぁ、あの時の・・・と納得してくれた。
「お別れ、言えるといいわね、英二くんに・・・」
「・・・うん。」
アポ無しだから会えるかどうか分からないけれど、もしかしたらお留守でおうちの方にも会えないかもしれないけれど、最後にもう一度だけ・・・
もう一度だけ___