第112章 【ソラ】
「私がひとりで育てるから!、英二くんの負担にはなりたくないから!、だから・・・」
「あなたの気持ちはわかるけど、子どもを育てるってそんなに簡単な事じゃないのよ?、それに英二くんにだって責任だけじゃなく、知る権利と選ぶ権利があるでしょ?」
もちろん、英二くんに黙って産むことをお母さんにはだいぶ反対されたけれど、どうしても納得しない私に、最後はとうとう大きなため息をついて納得してくれた。
「本当、璃音は言い出したら聞かないんだから・・・」
「ごめんなさい、お父さんとお母さんになら負担をかけていいって思っているわけじゃないんだけど・・・でも、英二くんの未来を犠牲にしたくはないの・・・」
それから、お母さんに付き添ってもらって病院に行って、お父さんとオンライン通話で家族会議を開いて沢山話し合って、出産するならイギリスに行ってお父さんの所で産んだ方がいいってことになって・・・
ここで産もうと思ったら、どうしても知り合いに見られてしまうだろうから・・・
英二くんに内緒にしようと思ったら、その方がいいだろうってことになって・・・
悪阻が酷い中、引越しの準備や学校の手続きは大変だったけど、それでも、お腹の子の為なら頑張れた。
みんなに黙って引越しをしてしまうことは、ずっと連絡をくれ続けた美沙や、傷つけたまま連絡出来ないでいる周くんに申し訳ないんだけど、どうしても会って謝る勇気がなくて手紙を書いた。
手紙なんかで一方的なお別れなんて、私の自己満足でしかないんだけど・・・
分かっているけど、それしか良い方法が思いつかなくて・・・
美沙、ごめんね、こんな私と仲良くしてくれてありがとう・・・
それから、周くん、本当にごめんなさい、もし最後に我儘を言わせてもらえるなら、これからも英二くんを支えてあげて・・・
そんな思いを込めた手紙は、最後に学校に挨拶に行ったときに、ふたりの机へと忍ばせた。