第112章 【ソラ】
「璃音がどんな答えを出したとしても、お母さんはその答えを尊重するから・・・どんな支援も援助も惜しまないから・・・だから、安心して考えなさい。」
お母さん・・・分かってる・・・
私が、産みたいって言うの分かっていて、悩まなくていいように言ってくれている・・・
だけど、いいのかな・・・
私はまだ高校生で、お父さんとお母さんに扶養してもらっている立場で、この子に責任なんて持てる年齢ではなくて・・・
本当だったら大人になって、しっかりと生活の基盤を整えて、結婚して、なんの心配も迷いもない状態で、みんなから祝福されながら赤ちゃんを授からなければならないのに・・・
本当に・・・いいのかな・・・
子どもを一人産み育てるということは、半端な覚悟でできることではない。
命も愛も時間もお金も、自分の全てを掛けて産み育てて・・・
大抵のものなら全て差し出すことができる。
でも、経済力だけは圧倒的に足りない・・・
足りないレベルではない、全くないのだから・・・
子どもを産んでから自分で働くと言っても、中卒では十分なほど稼げるのか・・・
結局、お父さんとあ母さんに頼らざるを得ない・・・
そんな親不孝をするなんて・・・
でも・・・諦めるなんて出来ない・・・
着床にどんな経緯があったって、英二くんの赤ちゃんが私の中で一生懸命生きてる・・・
『あなたのおかげで、私は英二くんに出会えました。大切な人と支え合い、愛し愛される喜びを知ることが出来ました。』
それは、英二くんの実のお母さんに身体を売るように言われたカラオケ店で、英二くんを産んでくれてありがとうと伝えたときに言った言葉。
あの時、あの人に感謝した気持ちに嘘はない・・・
あの人が英二くんを産んでくれたから、十分ではないけれど、それでも育ててくれたから、私はあんなに幸せな時を過ごせた。
この子が将来感じる喜びを、悲しみを、出会いを、全ての未来を・・・
人生そのものを奪うことなんか、絶対出来ない・・・