第112章 【ソラ】
「璃音、少しくらい食べないとダメよ。」
「・・・ごめんなさい・・・」
高校2年のクリスマスの夜、周くんの腕の中から逃げ出してから、何も食べられなくなってしまった。
確かにお腹は空いているんだけれど、いざ食卓につくとどうしても入らなくて・・・
英二くんと周くんを傷つけた自分が許せなくて、自己嫌悪に陥っていたから、精神的なものが大きいのかと思ったけれど、でもそれだけではなかったようで・・・
「・・・璃音、あなた・・・ちゃんと生理、来てる?」
ある日、ずっと部屋で寝てばかりいる私のところに様子を見に来たお母さんが、意を決したようにそう問いかけた。
「え・・・?、何、言っているの・・・お母さん・・・」
「ちゃんと生理きてる?」
質問の意味がわからない私の目をしっかりと見つめて、お母さんはもう一度問いかけた。
さすがの私も、そのお母さんの真剣な様子に、言いたいことは理解出来て・・・
生理・・・ちゃんと・・・来てるよね・・・
前に学校で貧血になって・・・
・・・でも、あれ・・・?
違う・・・先月じゃ、ない・・・
必死に記憶をたどるけれど、心臓がバクバクしてうまく考えが纏まらなくて・・・
記録している手帳を確認しようとペラペラと捲る手が小刻みに震えてくる。
やっぱり・・・
あれから色々ありすぎて、本当に色々ありすぎて、正直、生理が遅れていることに気が付かなかった・・・
「最近、ちゃんと食べれてないから遅れているだけかもしれないけれど・・・」
コトンと枕元に置かれた妊娠検査薬。
お母さん、私本人すら気がついてなかったのに・・・
やっぱり、お母さんはちゃんと私の事、見ててくれている・・・
そんなお母さんの心遣いが凄く嬉しいけれど、だからこそ、こんなものを用意させて心配させてしまったことを申し訳なく思う。
でも、それ以上に、もし本当に赤ちゃんが出来ていたらどうしよう・・・そう不安と恐怖で全身が震えていた。