第112章 【ソラ】
「ソラ、遊ばないの?」
遊具の近くのベンチに座わると、ずっと私の隣でさっき買ったばかりの家庭の医学を眺めているソラに問いかける。
いい、そう私の顔すらみず、真剣な顔で読んでいるソラに、苦笑いをしてしまう。
そうよね、そうだと思っていたけれど・・・
ソラは、顔は完全に英二くんにそっくりだけど、性格はどうやら私の方に似たらしくて、思いっきり人見知りで・・・
イギリスでも人前では絶対笑わなかったし、公園でも他の人がいるとずっと私の隣に座っていた。
誰かが「一緒に遊ぼう?」と誘いに来てくれても、その誘いに乗ることは絶対なくて・・・
まぁ、私も他のお母さん方に積極的に話しかけに行くことはないけれど・・・
あ、でも、英二くんも小さいときは、公園で誰かがいると茂みに隠れてこっそり見てて、誰もいなくなってから遊んだって言っていたっけ・・・
それは、英二くんの元々の性格っていうより、環境が大きかったんだろうけど・・・
「じゃあ、なんで公園に行きたそうにしてたの?」
「それは、お母さんでしょ。」
やっぱり見抜かれてる・・・
私、英二くんに、すぐ顔に出る、わかりやすいってよく言われたもんなぁ・・・
でも、別にソラが遊ばないなら・・・あっちに行っても・・・いいかな・・・?
せっかく来たんだし、ちょっとだけなら・・・いいよね・・・?
だったらソラ、向こう行こう?、そう促して場所を移動した。
「ああ、ここ?、お母さんがネコ丸を拾ったところって・・・」
懐かしい東屋までくると、ソラがそう問いかける。
そうよ、雨の日にね・・・、なんて頷きながら、あの日の英二くんを思い出す。
それから、ここで沢山すごした、ふたりの日々・・・
幸せなことも辛いことも沢山あった・・・
英二くんとだけではなく、周くんを傷つけ泣き崩れたことも・・・