第112章 【ソラ】
「お母さん、それ買うの?、同じの何冊目?」
「ほ、ほら、お母さんの記事が載ってるから嬉しいじゃない?」
「・・・写真NG、プライベートの質問もNGな上、まともに話せなくて、編集者さんたち困らせてたくせに?」
「うう・・・確かにそうだけど・・・」
見抜かれている・・・完全にソラに見抜かれている気がする・・・
私が英二くん目当てで買っているのが完全にバレてる・・・
さすがに英二くんが自分の父親だっては、気がついていないと思うんだけれど・・・
気がつかれたら困るんだけど・・・
ソラは、今まで一度もどうして父親がいないかを聞いてきたことがなくて、私も聞かれないから話すことはなくて・・・
聞かれても、素直に答えられるかは分からないけれど・・・
もし、この、Moonlightの菊丸英二が父親だって知ったら、ソラはどう思うかな・・・?
「ソラ、ちょっと休憩・・・」
結局、ソラの家庭の医学が重すぎて、私の本は少ししか買えなくて・・・
自宅まであと少しのところまでは来たんだけど、その少しが辛くて立ち止まる。
それから、フーっと大きく深呼吸して乱れた息を整える。
ふと聞こえてくる子供たちの遊び声・・・
あ・・・もうすぐ公園だから・・・
こっちに戻ってきてから、まだ一度もあの公園には行ってなくて・・・
英二くんは都心のマンションに一人暮らしって何かに書いていたから、あの東屋に行っても会うことは無いだろうけど・・・
それでも、懐かしくて胸がキューっと切なくなる。
「・・・少し、寄ってみようか?」
同じように公園の方をジッと見ていたソラに、そう問いかける。
身を隠して暮らすつもりなら、本当はあまり出歩かない方がいいけれど・・・
この公園に限らず、どこで知り合いに会うかもしれないんだけど・・・
ソラだって公園で子どもたちと遊ぶのは良い経験よね・・・
こっちじゃ幼稚園にも通ってないし・・・
なんてソラを言い訳にしているけれど、本当は私が行ってみたくて・・・