第111章 【ホコレルヒトニ】
「オレは菊丸英二、一応、芸能人をやっております。」
「・・・知ってますよ、これにも載ってるじゃないですか。」
そうですよね・・・、なんて笑顔を向けつつ、だったらもう少し興味持ってくれたって・・・そう内心肩を落とす。
いや、まぁ、みんながみんな、オレに興味あるわけじゃないからね・・・
それは分かっているけどね・・・
でも、コイツ、オレのこと、璃音からなんも聞いてないのかな・・・?
いや、さすがにこんな小さな子どもに、自分たちを捨てた父親の事なんて話さないか・・・
捨てたつもりはないけれど・・・知らなかったことだけど・・・
この子にとっては、そんなこと関係ないもんな・・・
オレの身勝手で璃音やこの子をどれだけ傷付け、苦労をかけたかと思うと、胸がギュッと締め付けられる。
謝ったって許してなんか貰えないよな・・・
「・・・では、僕はこれで、失礼します。」
その声にハッとして顔を上げる。
ぺこりと頭を下げて茂みを越えようとしているその子の腕を慌てて掴む。
折角の璃音の手がかり・・・
ずっとずっと、探し続けてきた・・・
ここで、この子を帰す訳にはいかないっての!!
「・・・なんですか?誘拐ですか?ダレカー、タスケテー、ヘンナヒトガー」
「うわっ、バカっ!、違う!、シー!、シー!!」
なに物騒なこと叫び出すんだよ、そう言いながらその子の口を抑える。
脳内に【Moonlightの菊丸英二、幼児誘拐容疑で逮捕!】なんて新聞の見出しが浮かぶ。
冗談じゃないっての!そんなことになったら、社会的抹殺は避けられないじゃん!
いや、叫び声と言ってもそれは明らかに棒読みで、本気で抵抗されたわけじゃないけれど・・・
でも、確かにこの状況は、誘拐って言われても仕方がなくて・・・
「お前は知んないかもしれないけどさ、オレはお前の・・・あー、もう!」
だからって、とーちゃんかもしんない、なんて、この子にはっきり言うわけにいかなくて・・・
なんて言ったらいいかわかんなくて、わしゃわしゃと頭を掻き乱した。