第111章 【ホコレルヒトニ】
「・・・かーちゃんとこ、戻ろ?」
「・・・そのうち。」
そのうちって何だよ!?、璃音、心配してんだろ!
早く璃音に会いたいのに、その子はずっと雑誌を眺めたままで・・・
色々確認しないといけないのともあるのに、全く動こうとしないで・・・
とにかく、本当に璃音とオレの子か確認するべきだよな・・・
もしかしたら、おかーさんの子でオレの弟の可能性だってあるし、最悪・・・なんて言ったら申し訳ないけど、他の女が母親だって可能性だって全くない訳じゃない・・・
まぁ、その場合、オレがここまで有名になってんのに、なんも言ってこないなんて有り得ないから違うと思うんだけど・・・
「お前、かーちゃんの名前は?」
ずっと雑誌を見ていたその子どもが、ゆっくりと振り返った。
お?って思って警戒されないように笑顔を作る。
オレってば、結構、昔から子供の相手すんの得意なんだよね。
璃音とデートした遊園地でも、ヒーローショーに飛び入り参加して大人気になったしさ!
今は、こいつもこんなに無表情だけど、すぐにオレのように笑顔満点にしちゃるよん!、なんて思いながらその子の顔を覗き込む。
「・・・個人情報なので。」
あぁ、うん、まぁそうだよな・・・
今の子は大人=全員不審者ってレベルで警戒するように言われてるもんな・・・
ここはもっと打ち解けてからじゃないと・・・
どうやって・・・?、とりあえず、「お前」って事ないよな?
「じゃあさ、お前の名前は?」
って、これじゃ、さらに警戒されるだけじゃーーーん!!!
ほら、雑誌を閉じると、もっと訝しげにオレを見ていて、はぁ・・・なんて5歳らしからぬため息をついている。
「あの、さっきからなんなんですか?、そんなに僕が気になりますか?、だいたい、人に名前を尋ねる時は自分からって礼儀を知らないんですか?」
・・・ハイ、スミマセン、全くなにも言い返せず、そうその場で深々と頭を下げた・・・