第111章 【ホコレルヒトニ】
「・・・5歳。」
雑誌からチラリと視線だけで向けてその子が答える。
5歳・・・指を折りながら、必死に逆算していく。
心臓がバクバクするし、指は震えるし、全然考えが纏まらないけれど、頭に浮かんでしまった仮説は、もう確定としか思えなくて・・・
誰だ・・・?、あの頃のオレって、好き勝手していた頃で・・・
でも、誰としてたって、毎回、必ずゴム付けてたし・・・
イヤイヤ、ゴムだって100パーセントの避妊率じゃないけど・・・
ドクン___
でも、たった1度だけ・・・避妊、しなかったことがある・・・
勝手に裏切られたと思い込んで、嫌がるその身体を無理矢理・・・
どこに守る価値があるんだよ?って、あんなに大切に思っていたのに・・・
鮮明に思い出される璃音の呆然とした顔・・・
ズキンと胸が痛んでギュッとそれを抑える。
もしこの勘が当たっていたら、璃音がオレの前からいなくなったことも、誇れる男になって欲しいって言った願いも、全て納得できて・・・
ドクン、ドクン___
璃音だ、絶対・・・
他の女なんて、考えらんない・・・
もし本当に璃音だったら、オレは璃音の人生を完全に狂わせてしまったわけで・・・
本当だったらお腹に宿ってくれた生命を、一緒に喜び大切に育まなければいけなかったのに・・・
「・・・お前さ、かーちゃん、どこ?」
ドキドキしながら、またその背中に問いかけた。
こんなに小さな子どもを、一人で放ったらかしにするようなこと、璃音ならしない・・・
きっと、この近くに来ているはず・・・
「・・・あっち。」
今度は視線すら振り返らず、その子は茂みの向こうを指さす。
・・・愛想ねー!!、いや、人見知りなのか?、璃音、ずっと家族以外の前では笑わなかったって言ってたし・・・
まぁ、オレも菊丸家に来る前は、同じようなもんだったけど・・・