第111章 【ホコレルヒトニ】
おかーしゃんの今の暮らしや璃音のことを考えると、ふたりが特定されることになったら大変なんだけど・・・
そこは、力のある事務所らしく、上手い具合に隠してくれているようで、こんな感じで思いっきりオープンに璃音のこともインタビューで答えちゃってるんだけど・・・
___じゃあ、先日発売したソロシングル、初の菊丸くんの作詞で話題だけど、『元気で明るい』がトレードマークの菊丸くんっぽくない切ないバラードのは、やっぱりそのAさんのことを思って書いたものだからかな?
『そだね・・・恋の歌って指定だったから・・・そんなの、切ない歌詞しか書けないよん・・・』
___本当に大好きなんだね・・・でも、菊丸くんのファンにとっては、ショックな事実なんじゃないかなー?
『あー・・・でも、オレ、Aさんと同じくらいファンのみんなも大切だと思ってるぞ!・・・大切だから、みんなに嘘つきたくないし、勝手な願いかも知んないけど、オレの彼女への想いも含めて、全部、全部応援して欲しい・・・ダメかにゃ?』
ほーんと、無理やりな言い分・・・
こんなの、ファンが離れていくに決まってる・・・
でも、オレが璃音にオレの気持ちを伝える方法はこれしかないから・・・
『璃音、読んでくれた?、オレ、今でも璃音を愛してるよ・・・』
スマホを取り出し、メールをひらくと、そう文字を打って送信する。
相変わらずすぐに届いた、宛先不明のメッセージ・・・
あれから、何年経っても、何も変わらないまま・・・
「璃音、頼むよ・・・会いに来て・・・?」
本当だったら何をしたってオレが探し出して、イギリスだって地球の裏側だって会いに行きたいのに、こんな情報社会の現代でも、璃音の情報は全く掴むことが出来なくて・・・
検索サイトで『小宮山璃音』の名前を検索しても、ヒットするのはオレと別れる前のものばかりで・・・
ゴロンと横になると、空を見上げる。
流れ落ちる涙に構わずに、両腕を精一杯空へと伸ばした。