第111章 【ホコレルヒトニ】
「・・・璃音・・・」
もう前に進み出したと思っていたのに、意識した途端、締め付けられる心臓・・・
会いたい・・・今、何処にいるんだよ・・・?
いや、イギリスなんだろうけど・・・
高校の卒業旅行、奮発して仲間みんなとイギリスに行った。
ウィンブルドンでテニスの聖地に感動して、みんなとの主要な観光地をめぐり、その合間に、璃音の写真を持って片っ端から人に聞いて回った。
身振り手振りを混ぜながらのオレの拙い英語だけでは無謀だから、スマホにダウンロードした翻訳アプリを駆使してみても、みんな首を横に振って去っていくばかりで・・・
「あー、もう!、なんで誰も知らないんだよー!!」
もっと徹底的に探したくても、時間は無限にある訳じゃなくて、結局、なんの情報も得られないまま、帰国するしかなくて・・・
やっぱ、オレに出来ることは、精一杯頑張って、璃音にオレの活躍を届けることだけで・・・
結局、やる事は何も変わらずに、勉強とテニスを頑張ることで・・・
だけど、頑張れば頑張るほど、思い知らされてしまった。
自分の限界・・・乗り越えられない壁・・・
どうにもならない実力差に、テニスを趣味にする時が来たのかなーって、覚悟を決めなければならなくて・・・
そしたらオレ、どうやって璃音にオレの活躍を知らせればいい・・・?
テニスの他にオレに出来ること・・・?
そんな時、今の事務所にスカウトされた。
歌って踊れるアイドル、オレにはうってつけだった。
アクロバティックは気持ちいいし、注目を浴びるのも悪くない。
大好きなチョコレーツにまた会えるかも知んないし・・・
ただ、おかーさんのこともあるし、散々悪さしてきた過去があるから、叩けば埃が出まくる身体で・・・
そんなんで、アイドルになんてなっていいのかなーって悩んだりもしたけど、んじゃ、叩かれないように最初から隠さなければいーじゃん??って思って・・・