第111章 【ホコレルヒトニ】
「なんかってなによ!何がちがったのよ!」
「・・・会計の時に、当然のように財布ださないところがなんか違う。」
「・・・それは確かに図々しいわね、でもここのカフェなんかみんな学食料金で安いじゃない!ケチ臭いこと言わないの!」
「誠意の問題だろー?いいんだってオレが出すのは、市川相手じゃないしさ。」
でも、財布出す振りくらいしてくれたっていいじゃん?
「その前はなんだっけ?、お茶のパックの水滴拭いてくれなくて別れたんだっけ?その前はウエットティッシュ持ってなくて・・・どんだけワガママなのよ!」
「うるさいな!」
確かに自分でも、些細なことだと思うけど、その些細なことの積み重ねで「違う」って思っちゃうんだから、仕方がないじゃん?
「結局、英二は璃音が忘れられないから、誰とも付き合えないんだよ。」
「それはあるわねー、告白されて付き合う娘、みんな何となく璃音に雰囲気似てる人ばっかりだし?」
そのふたりの言葉に、驚いて目を見開いた。
なによ、無意識だったの?、そう市川に言われて、改めて元カノ達を思い出した。
言われてみると、確かにみんな雰囲気が璃音に似てるかもしんない・・・
なんか違うって感じだポイントも、全部、璃音ならって思い当たることばかりで・・・
「・・・はは、なんだ、あったり前じゃん・・・」
なんか違うって、だって、それは璃音じゃないから・・・
無意識に璃音を求めても、代わりじゃ満たされるはずないから・・・
「んで、お前ら飯食わねーの?、座れば?」
「いやよ、たった今振られた人と相席なんて!縁起悪いー!」
「不二ぃ・・・お前、本当にこんな無神経な彼女でいいのー?」
「良かったよ、英二には美沙の魅力が分からなくて。」
大学部に進学してから付き合いだしたふたり・・・
ふたりとも璃音のことで傷付き、支え合ってきたから、落ち着くところに落ち着いたなーってみんなが祝福していた。
きっと璃音が知ったら、自分の事のように喜ぶんだろうな・・・
仲良さそうに離れたテーブルへと座るふたりを、少し羨ましく思いながら眺めた。