第111章 【ホコレルヒトニ】
___これはどうしても、その女の人のことを聞かないといけないな、きっとファンもすごい気になるところだと思うけど・・・
そのAさん(仮)のことを今でも菊丸くんは想い続けているってことで間違いないのかな?
『あったり前じゃん!きっと忘れらんない・・・一生・・・』
「き、菊丸くん!、あ、あの、良かったら今度のお休みに遊びに行かない?」
「いいよーん!じゃあ、他のやつらも誘って・・・」
「ち、違くて!!・・・その、ふたりで・・・」
灰色の受験が終わると、なんとか大学部に進学できることになって、オレらのことを知らない外部進学の子から誘われるようになって・・・
春になって大学生になれた開放感もあって、へ?、まぁ、いいけど・・・?、なんてオッケーすることもあった。
だけど、なんかやっぱり、違うーってなって、長続きすることは無かったけど・・・
「もういい!英二なんてどうせ私のこと好きじゃないんでしょ!」
突然、顔面に感じた冷たい感触。
髪を滴り落ちる水滴で、水をかけられたことに気がついた。
うわー、修羅場じゃん、そんなヒソヒソ声と突き刺さる視線。
マジかよ・・・、ため息をついてハンカチを取り出す。
大学部敷地内のカフェ、混雑しているランチタイムでこんなことがあったら、そりゃ注目を浴びるのは仕方がないけれど・・・
「英二、派手にやられたね。」
「ねー、私、こういうの初めてみたー!」
そんな中、全く遠慮せずに話しかけてくる不二と市川を恨めしく見上げた。
何やらかしたの?、その当然の疑問に、さー?、そう手のひらを上げて首を振った。
「やらかしたもなんも、本当に突然だったから・・・」
「なんかやったに決まってるでしょ?、突然怒って水かける人なんていないし・・・ところでいいの?追いかけなくて・・・」
「あー・・・別にいいよ、面倒だし。なんか思ってたのと違うし。」
「またそれー?、あんた、何人付き合っても結局、すぐに別れんじゃん!」
そんなやり取りを不二がクスクスと笑いながら見てる。
なんなんだよ、その相変わらず余裕の笑みをもう一度睨みつけた。