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【テニプリ】闇菊【R18】

第111章 【ホコレルヒトニ】




「・・・ありがとう、やっぱり、英ちゃんは優しいわね・・・」


少し驚いて、それからその女は嬉しそうにタオルを受け取る。
なんでそんなことしようと思ったのか、自分でもよく分からないけれど・・・
いくらこの女がしおらしくなったからって、全てを水に流せるはずないけど・・・


「・・・一度も、言ってあげれなかったけれど、お母さん、英ちゃんのこと、大好きよ。」


ああ、オレってすげーチョロいな・・・
その女の「大好き」のたった一言で、こんなに涙が止まらないなんて・・・


だって、オレ、すげー、おかーしゃんのこと、大好きだったんだ・・・
ずっと、その一言を言って欲しくて仕方がなかったんだ・・・


「バカね、英ちゃんが泣くことないじゃないの・・・」


その女が、オレのタオルでオレの涙を拭こうとする。
いい!っ、慌てて拳で涙を拭いそれを拒む。


「あ・・・本当にごめんなさいね、お母さん、調子に乗ったわね・・・」


寂しそうに数歩、後ずさりするその女の目をしっかりと見つめる。
涙がこぼれ落ちないように、眉間に力を込めて・・・


「今はいいから、今度、会う時に返して!」


それ持って、また会いに来て・・・おかーさん・・・、オレのその言葉にその女がまた涙を流す。
オレのかーちゃんは、大好きなかーちゃんは菊丸家のかーちゃんだけど・・・


このおかーさんも・・・やっぱり大好きだから・・・


「・・・ありがとう、英ちゃん、本当にありがとう・・・」


この女の「大好き」の一言で、全て帳消しになる訳じゃないけど、それでも、オレが言って欲しいと思っていたその言葉を、自分が一度も言わなかったって分かっていて、そしてそれを言ってくれたことですごく心が軽くなって・・・


「あ!、でも、菊丸のかーちゃんが嫌がったらもう会わないからっ!、オレにとって、一番は今のかーちゃんだから!」


そこだけは間違っちゃいけない大切なことだから・・・
もう、間違って本当に大切なものを失うのは嫌だから・・・


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