第111章 【ホコレルヒトニ】
「・・・今、なにやってんの?」
「仕事?、スーパーでレジのパート、夜だと少し時給いいから・・・」
スーパーのレジ・・・
昔みたいに派手な格好して男に媚び売ってた方が、よっぽど沢山稼げるだろうに・・・
それに・・・
「・・・大丈夫なの?、周りの人・・・知ってんの?」
「英ちゃんのこと?、店長さんは全部知ってて、それても雇ってくれたの・・・有難いわね・・・」
その女が数歩、オレの方に近づいた。
条件反射で同じ分下がり距離をとった。
ハッとした顔をして、ごめんなさいね、そう女が頭を下げる。
ごめんなさい・・・?、この女が、オレに・・・?
「・・・小宮山さんにも謝らなくちゃ・・・今日は来てないの?」
璃音にも・・・?
やっぱり、この女の変わりようは璃音が何かしたからに違いなくて・・・
一体、何があったのか、オレは知る権利があると思うんだけど・・・
「璃音は、来ない・・・今日だけじゃなく、これからも・・・」
「・・・それって、やっぱりお母さんのせいよね・・・」
ゴメンね、そうもう一度謝るその女に、ゆっくりと首を振った。
この女は関係ないから・・・きっかけはそうだったけど、悪いのは璃音を信じなかったオレだから・・・
「・・・お母さんね、小宮山さんに英ちゃんを産んでくれてありがとうって、お礼、言われちゃったのよ・・・」
感謝されるなんて思わないじゃない・・・こんな母親・・・、そう言ってその女が瞳から涙を流す。
「しっかりしなきゃって、思ってね・・・お母さんも愛されないで育って、あんな母親にはならないってずっと思ってたのに、結局、英ちゃんをもっと酷い目にあわせちゃった・・・本当にごめんなさい・・・」
ああ、やっぱり、璃音はすげーな・・・
璃音の無意識の一言が、この女をここまで変えたんだ・・・
「・・・汗臭いかもしんないけど・・・」
しばらく悩んでから、首にかけていたタオルを差し出した。