第111章 【ホコレルヒトニ】
「・・・不二、あのさ、勉強、教えてくんない??」
カウンセリングとトレーニングだけじゃなく、大学部に進学するとなると勉強も本気で頑張らないといけなくて・・・
こんな状態じゃ、テニスでのスポーツ推薦は貰えるか分かんないし、真面目に勉強なんてしてこなかったし、普段の生活にも褒められた功績なんてないし、付属校とはいえ合格できるだけの学力を付けなくちゃいけなくて・・・
『英二くん、頭の回転も速いですし、集中力も暗記力もあるんですから、毎日ちゃんと積み重ねれば、もっと成績あがりますよ?』
夏休み、璃音に宿題を教えて貰いながら言われた言葉・・・
それが本当なら、毎日、頑張れば、きっと・・・
「璃音、オレ、頑張るから、ずっと見てて・・・?」
カウンセリングにトレーニングに勉強に、訳が分からないほど自分の全てを注ぎ込んだ。
___その女の人のことも気になるけど、まずは本当のお母さんのことを聞きたいなー。当時とても衝撃的なニュースになったから覚えているけど、あの時の男の子が菊丸くんとはね・・・その後、実のお母さんとはどんな感じ?もう蟠りはない?
『全くとは・・・でも、人を許す強さを、オレは教えてもらったから・・・』
___もしかしてそれも、さっきの女の人?
『ん・・・その人がいたから、こんな穏やかな気持ちであの人のことを思い出せるようになった・・・カウンセリングのお陰かもしんないけど・・・』
あの女にされたことを思えば、許せるはずがないと思っていた。
一生、会うつもりもなかった。
だけど、あの時・・・
「ゲームセット、ウォンバイ菊丸不二、6-4!」
沸き起こる大歓声、やっほーい!と全身で喜んで不二に抱きついた。
高校3年の夏、出場した全国大会のダブルス1、ラケットも握れない状態から、なんとか間に合わせて不二と組んで見事に勝利をした。