• テキストサイズ

【テニプリ】闇菊【R18】

第111章 【ホコレルヒトニ】




そう、オレがアイドルになったのは、璃音に今のオレを見てもらいたいから・・・


『ごめんなさい・・・その、つまり・・・大人になって・・・どこかで、英二くんの噂を聞いた時に、私が好きになった男の人は、こんなに素晴らしい人なんだって、胸を張れる人になっていて欲しいんです・・・勝手なお願いなんですけど・・・』


それはあの日、璃音がオレの前に現れて、そしてオレの腕の中から逃げ出したあの踏切で、璃音からされたお願い。


あの日___


愛してる、そう踏み切り越しに愛を確かめあった璃音は、案の定、電車が通過した時には、もうその姿を消していた。


「璃音!!!璃音!!!」


踏切が開いた途端、大声で呼びながら璃音を探した。
だけど、さっきまでそこにいたはずなのに、どこにもその姿は見つけられなくて・・・
急いで家にも行ってみたけれど、やっぱりそこにもいなくて・・・


「・・・なんでだよ!!!」


そう、頭を抱え込んでうずくまった。
涙が止まらなくて、大声を上げて泣き叫んだ。


最後に見た璃音は、必至に涙をこらえて笑顔を見せていたけれど、オレはもう一生笑うことなんて出来ない、そう本気で思った。


それから毎日、また空っぽの抜け殻になった。
公園の東屋で毎日空を眺めて過ごした。


誰の声も耳に届かなくて、学校にも行かずに・・・


「英二、璃音は英二にどんな気持ちで最後に会いに来たんだろうね?」


そんなある日、突然、目の前に現れた不二の言葉に、目を見開いた。
璃音がどんな気持ちで・・・?


「あんなに璃音の愛情を独り占めしておいて・・・どうしても英二にだけは最後に会いたいと思うほど、璃音に想われていたくせに・・・英二には璃音の覚悟がなにも伝わらなかったの?」


璃音の、愛情・・・
独り占め・・・


『このためにわざわざ・・・?』
『はい・・・あと、英二くんと少しお話がしたくて・・・手紙ではなく、直接・・・』


きっと、ねーちゃんの制服を返すより重要だったこと・・・
あの時、璃音が直接、オレと話したかったこと・・・

/ 1433ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp