第111章 【ホコレルヒトニ】
家に帰ってくると、必ず、毎回来ないと気が済まないのは、懐かしいあのいつもの公園。
帰ってきたばかりなのに、直ぐに行きたくなったのは、懐かしい璃音の名前にいてもたってもいられなくなったから・・・
四季折々の花々、流れる小川のせせらぎ・・・
遠くで遊ぶ子供たちの声と、それを見守りながら井戸端会議に花を咲かせる母親たち・・・
その中の子どもが一人、チラリとこちらをみたから、やべって慌てて目深に帽子をかぶり直す。
いつも璃音とたくさんの時間を過ごした東屋まで来ると、既にそこには先約がいて・・・
先約って言うか、暑くなって脱いだであろう子供用の上着が置いてあって・・・
いつ、持ち主が取りに来るかわかんないし、さすがに座れないか・・・
こんなとき、芸能人になったことを後悔はしてないけど、不便には思う。
少し考えて、その先の茂みへと視線を移す。
・・・ひとりになるには最適か・・・
まぁ、璃音にとっては、良い思い出ではないだろうけど、そう苦笑いをしながら、オレが最初に璃音に目をつけた茂みの中へと身を隠した。
それにしても、ここでこうして横になっていると、あの頃はこんな所で堂々とやってたなんて、ほーんと、怖いもの知らずだったよなぁ・・・なんて苦笑いしながら持ってきた雑誌を眺める。
有難いことに表紙とトップ記事はオレ、あとは今度上映される映画の話題や、ミステリアスな女流作家の新作小説の宣伝・・・
順番に、最初からじっくりと目を通していく。
___本日は、今人気急上昇中のアイドルグループ、Moonlightのメンバー、菊丸英二くんに来てもらいましたー!菊丸くんは学園祭のステージでダンスを披露したところをスカウトされたんだよね。やっぱり昔から芸能界に憧れていたの?
『いんやー、全然!、スタントマンには興味あったけど・・・でもスタントマンじゃ、オレだってわかんないじゃん?、アイドルをやってるのは、今のオレを見せたい人がいるから・・・こうして雑誌やテレビで活躍をみてもらえんじゃん?』