第110章 【アイシテル】
ひたすら「ダメです」を繰り返す小宮山に、何度も必死に訴える。
逃げられないように、しっかりとその身体を抱きしめながら・・・
チラチラと通り過ぎる人達の視線を感じたけれど、そんなの構ってらんなくて・・・
今、この手を離してしまったら、きっともう二度と小宮山には会えなくなってしまう気がして・・・
「イギリス行くから!?そんなのオレ平気だから!!遠距離だって・・・すぐに会えなくたって全然構わないから!!」
遠距離なんて考えらんないって言ったのはオレだけど・・・
本当は会いたい時に会えないのは辛いけど・・・
でも、住んでいるところの距離と心の距離は、決して同じではないから・・・
どんなに遠く離れていたって、小宮山となら心はいつも一緒にいられるから・・・
「だけど・・・でも・・・」
「毎日通話かけるし、LINEだってするし・・・オレ、必死に働いて、イギリスにだって会いに行くからさ・・・」
だんだんと声が震えて小さくなる。
声だけじゃなくて、身体全体の震えが止まらなくて・・・
一旦、止まった涙は、また大量に溢れていて・・・
「だから・・・頼むよ・・・」
最後に振り絞ったその声が、腕の中の小宮山に届いたのだろうか・・・
必死に抵抗していた小宮山の力が、だんだんと弱くなる。
やがて、小宮山は完全に抵抗をやめて、オレの胸に頬を寄せた。
「・・・英二くん、泣かないでください?」
英二くんが泣いていたら、私、安心してイギリスに行けませんよ?、その小宮山の言葉にハッとする。
慌てて拳で涙を拭うと、それ以上心配かけないように必死に目頭に力を込める。
そうだ、泣いている場合なんかじゃない、オレがこんなんだから小宮山はオレのことを心配して、また自分の気持ちを抑え込んでしまう・・・
笑うから・・・
笑って「オレは平気だから」って、小宮山を送り出すから・・・