第110章 【アイシテル】
「・・・好きだって思ったんです・・・ずっと支えてくれた不二くんを・・・好きだって・・・」
一瞬、小宮山の口から発せられた「不二を好き」の言葉に胸が締め付けられた。
だけど、その小宮山の様子で直ぐに理解出来た。
小宮山、不二を傷つけたことを気にしてるんだ・・・
きっと、オレを忘れられなくて・・・
もしかしたら、ただの自惚れで、すげー恥ずかしい考えかもしんないけど・・・
そんなこと、小宮山はちっとも思ってないかもしんないけど・・・
オレの涙はもうすっかり止まっていて、代わりに小宮山の目からたくさんの涙が流れていた。
少し戸惑ってから震えるその両肩に手を添えると、ビクッと小宮山が肩を跳ねさせる。
だけど、それ以上に小宮山は嫌がる様子を見せなくて・・・
小宮山に拒まれないことを確認しながら、ゆっくりと引き寄せて抱きしめた。
「・・・英二くん・・・」
戸惑っていた小宮山が、オレの腕の中で小さくオレの名前を呟いた。
すごい懐かしい呼び声、抱き心地・・・
ああ、本当に小宮山だ・・・
「小宮山、オレ、一緒に謝るから・・・不二に、ちゃんと謝るからさ・・・」
本当、都合が良すぎるけど・・・
あんなに傷つけといて、ふざけんなって感じだけど・・・
だけど、やっぱり小宮山を失うなんて考えられなくて・・・
「だから、もう一度・・・オレと」
やり直して?、そう伝える前に、腕の中の小宮山がビクッと身体を震わせる。
ダメです!、そう慌てて首を横に振ると、必死にオレの胸を押し戻す。
だけど、もう一度この腕の中に閉じ込めたその温もりを手放したくはなくて・・・
いくら嫌がられたって、はい、そうですかって訳には行かなくて・・・
「もう小宮山のこと絶対泣かせないから!二度とあんなことしないから!!だから・・・!!」
「ダメです!!私、もう英二くんの傍にはいられないんです!!もう・・・」