第110章 【アイシテル】
「・・・はい、どうしても言えなくて・・・でも、内部進学したかったのも本当ですよ?」
申し訳ありません、そう頭を下げる小宮山・・・
違う、責めているわけじゃないんだ・・・
だってそれは、オレが小宮山に依存していたからだから・・・
オレがしっかりしていたら、小宮山はなんも迷わず、とーちゃんのところに行くって言えたはずだから・・・
小宮山はいつだってオレのことを第一に考えてくれて・・・
オレのことを思ったら、正しい判断がいつも出来なくて・・・
あの女がオレを縛り付けるように、オレが小宮山を縛り付けて・・・
そんなつもりはなかったのに、結局、オレと小宮山の関係は、あの最初の体育館倉庫のまま・・・
カンカンと鳴り響く警笛。
踏切の手前で立ち止まる。
危険を知らせる赤い点滅を眺めていると、鮮明に蘇るあの日の小宮山の泣き顔・・・
『・・・や、やめて・・・お願い・・・』
その哀願すら興奮剤に変えて、自分勝手な欲望を押し付けた・・・
苦しくなる胸をギュッと押さえる。
おちつけ・・・ここでオレが倒れたりしたら、また小宮山の足を引っ張ることになる・・・
小宮山に気付かれないよう、静かに深呼吸をして平静を装う。
目の前を勢いよく横切る電車。
ゴォォォっと言うすごい音と風圧が収まると、警笛がなりやみゆっくりと安全バーが上昇する。
それと同時に歩き始める小宮山・・・
だけど、オレの足は前に進まなくて・・・
「・・・あの女・・・小宮山に・・・」
小宮山の肩がピクリと跳ねる。
踏切の中ほどまで進んでいた小宮山が、立ち止まり振り返える。
英二くん・・・?、そう心配そうな顔でオレを見ている。
やっぱり小宮山を誤魔化しきれるわけないか・・・
大丈夫、へーき・・・、そう大きく息を吸って自分を落ちつける。
本当は全然大丈夫じゃない・・・
心臓はバクバクするし、息苦しくて全身がガクガク震えてくる。
だけど、これだけはちゃんと確かめないといけないから・・・