第110章 【アイシテル】
芽衣子ちゃんから教えて貰って、大体の予想はできたけど・・・
その後、小宮山の家の前に行って、小宮山と不二とのやり取りで、確信はしているけれど・・・
「あの女・・・小宮山に、何、した?」
小宮山の視線が痛いほど突き刺さる。
だけど、オレはその顔が真っ直ぐ見れなくて・・・
ずっと足元を見つめながら、あの女・・・、そうもう一度繰り返す。
視界に小宮山の靴が入ってくる。
小宮山がオレと向き合ってくれている。
恐る恐る視線をあげると、案の定、小宮山は真っ直ぐにオレを見ていて・・・
視線があって慌てて逸らしたけど、でもなんとか思いとどまって、思いっきり空気を吸い込むと、しっかりと小宮山の目を見つめる。
「全部、話して・・・?」
・・・はい、少し間を開けて、小宮山はしっかりと頷いた。
「・・・学校から帰ろうと校門を出たところで、英二くんの本当のお母さんに声をかけられたんです。」
小宮山から聞いた話は、笑っちゃうくらい芽衣子ちゃんの予想通りの展開で・・・
突然現れたあの女に売春を強要されたこと・・・
断ったら代わりにオレを働かせると脅されたこと・・・
その時の相手にあのキスマークを付けられてしまったけれど、寸前で不二に助けられたこと・・・
その間に何本かの電車が踏切内を経過していく・・・
カンカンカンと警笛が鳴り響く度に、グッと胸を抑えて沸き起こる不安感を必死に振り払う。
「あ・・・その後、何もありませんか?、私、その・・・上手にできなくて・・・もし英二くんに連絡が行っていたらどうしようって・・・本当に申し訳ありません。」
眉を下げてオレに謝る小宮山に、慌てて首を横に振る。
オレのことなんて、気にしなくていいのに・・・
オレのせいでそんな目にあったのに、今回だけじゃなく何度も何度も、酷い目にあっているって言うのに・・・
本当に小宮山はいつもオレのことを一番に心配してくれて・・・
その細い身体を抱きしめたいと強く願う。
再会してからもうずっとだけど、グッと左腕を掴んで必死にその衝動を抑え込む。