第18章 【メバエタオモイ】
「だからさ、もう小宮山のこと、解放した方がいいかと思ったんだけどさ……」
いらないってわけじゃないんだけどさ、やっぱその方が小宮山のためじゃん……?そう英二くんは空に視線を向けたまま言うから、慌てて彼の制服の裾を掴んで何度も首を横に振る。
いいもの、私、英二くんのそばにいられるなら、身体だけでいいもの……!そうに必死に視線で訴える。
そんな私に英二くんは、もう一度ふーっとため息をつくと、ほんと、どうしようもないバカじゃん?そう苦笑いをして私の身体を引き寄てくれた。
「オレといたって、未来、ないよん?」
「私、未来なんていらない……」
そりゃ、英二くんとの未来を夢見ないわけではないけれど、普通の高校生のようにデートしたり堂々と恋愛出来たら幸せだろうなって思うけれど……
でも、どうせ叶わない夢なら、セフレとしてでも構わないから、英二くんに愛される今だけの夢を見続けたい……
ああ、コレが最初に英二くんが言っていた「ボランティア」ってことか……そう思いながら英二くんの胸に頬を寄せると、また一滴涙がこぼれ落ちた。
英二くんにはっきり言われたことは悲しいけれど、彼が私のことを思いやってくれたことは嬉しくて……
悲しくて、嬉しくて、苦しくて、幸せで……
もう自分でもよく分からない複雑な想いに混乱しながらも、今はただ、彼の側にいられる喜びを感じてその背中に腕を回す。
英二くん、大好き、そうますます口に出来なくなった言葉を、何度も心の中で繰り返した。