第18章 【メバエタオモイ】
登校する生徒達の楽しそうな声が遠くに響く屋上に聞こえるのは、必死に堪える私の泣き声と、ごめんなと申し訳なさそうに謝る英二くん声。
私との行為は大好き、私はキライじゃない、だけど私のことは絶対に好きにはならない……そんなこと最初から分かっていたことじゃない。
最初から全部わかっていたことなのに、これ以上泣いたら逆に申し訳ない、グッと涙を拭って空を仰ぎ、これ以上涙がこぼれ落ちるのを我慢する。
「大丈夫です、私、大丈夫ですから、だからもう謝らないで……?」
そう言いながら、精一杯の笑顔で英二くんに笑いかけると、彼はやっぱり申し訳なさそうな顔をして笑った。
「でもさ、小宮山がダメだっていう訳じゃなくてさ……」
空に視線をもどした英二くんはそう徐に口を開き、他の誰だって、一生、好きになんない、そうまた強い意志を感じさせる瞳でそっと呟く。
私がダメな訳じゃなくて、他の誰でもダメなの……?
どうしてそんな寂しいことを言うの……?
英二くんは心の奥底に、どれほどの深い闇を抱えているというの……?
次から次と溢れ出すそんな疑問の言葉を、とても彼に投げかけることなんて出来なくて、それらを黙ってぐっと飲み込むと、そっと私も彼の見つめる空を仰ぐ。
いつか話してくれるかな……
話してくれたら嬉しいな……
そんな風に思いながら彼と並んで眺めた空には、消えかかった飛行機雲のすぐ隣に、また新たな飛行機雲が真っ直ぐに延びていた。