第109章 【カラッポ】
『・・・英二くんは、遠距離とか・・・やっぱり考えられないですよね・・・?』
『へ?、あったり前じゃん!、オレ、会いたい時に会えなきゃ、絶対ヤダかんな!』
ドクン、ドクン___
更に大きくなる胸のざわめき・・・
そうだ・・・小宮山が言葉にしたのは「遠距離」・・・
小宮山はオレに言えなかったんだ・・・
オレが「会いたい時に会えなきゃ、絶対ヤダ」なんて言ったから・・・
いや、違う、そうじゃない・・・
もちろん、それもあるかもしんないけど、オレが小宮山に依存してるから・・・
小宮山、自分の将来よりオレのことを思って・・・
本当はイギリスに行きたかったのに、オレのそばに居てくれようとしてくれて・・・
もうオレのそばにいる必要が無くなったから・・・?
じゃあ、予定を早めたのはなんで・・・?
やっぱ、オレのせい・・・?
「ちょっ、英二!!」
今度は来た道を逆に走り出す。
不二なら、何か知ってるかもしれない・・・
そう思ったら、不二と気まずいこととか、もうどうでもよくて・・・
今はただ、あの後、小宮山に何があったのかが知りたくて・・・
「ふ、不二!!」
ちょうど1時間目が終わったばかりの不二の教室に飛び込む。
その瞬間、シンと静まり返る教室内・・・
今日、何度目かの居心地悪い空気・・・
それはきっと、もう小宮山のことが知れ渡ったであろうことを意味していて・・・
だけど、やっぱりそんなこと構ってらんなくて、真っ直ぐに不二の元へと走りよる。
「___次、移動教室なんだ、悪いけど・・・」
静かに口を開いた不二の態度は、あの時と何も変わってなくて・・・
いや、それ以上かもしんない・・・
あの小宮山の家でオレに向けた冷たい視線、低い声・・・
その不二の凍るような威圧感に、あ、うん・・・、そう小さく頷くしかできなくて・・・
それは不二がオレに怒っているからだけじゃなく、小宮山のことで、同じように大きなショックを受けていることが明らかで・・・