第109章 【カラッポ】
結局、肝心なことは何もわからないままか・・・
目を伏せながら無言で目の前を通り過ぎる不二を見送る。
その瞬間、目に止まった不二の手荷物・・・
クリアケースの中に、文房具と一緒に大切そうに入れられた封筒・・・
それは、さっき小宮山の家の前で市川に見せてもらったものと全く同じ・・・
「不二っ!、その手紙、小宮山の!?」
思わずケースを持つ不二の腕を掴んだ。
その突然のオレの行動に、不二は目を見開いてオレを見ると、それから慌ててオレの腕を振り払い、ケースを見えないように隠す。
「・・・英二には関係のないことだよ。」
冷静を装っているけれど、動揺を隠しきれていない不二の表情・・・
もう何も言えなくて、足早に教室を出ていくその背中を見送る。
小宮山、不二にも何も言わず、手紙でサヨナラしたんだ・・・、そう市川の手紙の内容を思い出す。
不二・・・
教室に戻ると、自分の席に座りぼんやりと外を眺める。
そっと机の中をのぞき込んだけど、そこは冬休み前に全ての荷物を持ち帰ったままの何も無い状態で・・・
もしかしたら小宮山はオレにも何が残してくれたかも・・・?、そう少しだけ抱いた期待はあっさりと打ち消されて・・・
空っぽの机と同じように、心ももう空っぽで・・・
イチカワト フジニハ チャント テガミヲ カイタノニ・・・
オレニハ ナニモ ナイナンテ・・・
「小宮山・・・」
そのまま視線を窓に戻すと、その日は一日中、ぼんやりと窓の外を眺めて過ごした。