第109章 【カラッポ】
小宮山には来てもらいたいけれど、不二と一緒のところは見たくなくて、胸が痛んでため息が溢れる。
「・・・あのさ、市川・・・」
慌ててその胸の痛みを追い払うと、小宮山の隣の席・・・元々のオレの席に座る市川に話しかける。
驚いた顔で市川は勢いよくオレを見上げると、それからハッとしてすぐに視線を伏せる。
なに?、そう視線をそらされたままの返事はとてもそっけなく、当たり前なんだけど、オレに対する嫌悪感が滲み出ていて・・・
だけど、そんなあからさまな不機嫌な空気だからって、引く訳には行かなくて・・・
「・・・小宮山、今日、来るよな・・・?」
「・・・私が知るわけないでしょ?、大体、アンタには関係ないことだし。」
「・・・そりゃ、そうだけど・・・」
少しでも小宮山のことが知りたくて市川に聞いてみたけれど、市川はもうそれ以上オレの問いに答えてくれそうになくて、結局、何も聞けないまま、もう一度ため息をついて自分の席へと戻るしかなかった。
「ほら、お前ら、席につけー。」
頬杖をつきながら窓の外を眺め、小宮山が来るのを待っていたけれど、結局、そのままチャイムがなって担任が入ってくる。
みんな、揃ってるな、そんな担任の言葉に、小宮山が来てないじゃん、そう視線は窓の外にむけたまま、心の中で悪態をつく。
「出席を取る前にみんなに伝えなければならないことがある。」
いつになく真剣な担任の声。
?、不思議に思って徐ろに視線を移す。
他のみんなも何かを感じとったのか、ざわめいていた教室内がしんと静まり返る。
みんなの視線が自分に向いているのを確認した担任が、それからゆっくりと口を開いた。
「・・・クラスメイトの小宮山だが、みんなよりひと足早くこの学校を巣立ち、新たな道へと歩みだした。」