第109章 【カラッポ】
「本当にゴメン!!」
「君たちには本当に申し訳ないと思っている・・・仲間内のトラブルに巻き込んでしまった。」
だけど次の瞬間、反対側で同じように下げられたタカさんと乾の頭・・・
すんませんでした!、すみません、そう後ろから聞こえる、桃と海堂の声・・・
その異様な光景に、何が起きたのか理解出来ず呆然としてしまう。
それはオレだけじゃなく、オレを責め立てていた女たちも、周りで見ていた野次馬も同じで・・・
シンと辺りが静まる中、腰を90度に曲げて頭を下げ続ける5人・・・
なに!?、登校してきたばかりの生徒の驚く声に、ハッとして我に返る。
「だから、みんな、なんでだよ!みんなが謝る必要ないじゃん!!悪いのはオレなのに!!」
慌ててみんなに辞めるように声をはりあげる。
だけど、みんなその深深と下げた頭を上げようとはしないで・・・
そんなみんなを見ていたら、オレなんかのためにダメだよっ!、そう止める声が涙まじりのものになる・・・
「いいんだ、英二、元はと言えば俺達も悪かったんだ。」
「だから、みんななんも悪くないじゃん!オレが勝手に!!」
いや、俺達も悪かったんだ、そう繰り返す大石の力強い声・・・
その声に、もう何も言えなくなる。
「菊丸が苦しんでいるのを分かっていて、何も出来なかった・・・いや、しようとしなかった。」
「うん・・・今回のことだけじゃない、中学の時も・・・そっとしておいた方がいいなんて、やっぱり間違っていたんだ。」
大石・・・
乾、タカさん・・・
「連帯責任っすよ!英二先輩!」
「何、遠慮してるんすか?先輩らしくもない・・・」
桃に海堂・・・
そう言って頭を下げてくれるみんなの気持ちが嬉しくて・・・
オレ、あの頃はテニスが出来なくなったことが辛すぎて、みんなの優しさを素直に受け入れることが出来なくて・・・
自分からみんなのこと遠ざけて、勝手に堕落して行ったけど、本当はもっとみんなに甘えればよかったんだ・・・