第109章 【カラッポ】
目が覚めると目に飛び込んできたのは白い天井・・・
ピッピッと定期的に繰り返される機械音・・・
ドクン___
大きく心臓がざわめく。
そこが病院なのはすぐにわかった。
直ぐにわかったからこそ、本能がそれを拒む。
それは、あの女に捨てられて意識を失い、目覚めた時に見た光景と同じだから・・・
ガバッと起き上がり、辺りを見回す。
誰もいない・・・
さらにざわめく心臓・・・
とーちゃん・・・かーちゃん・・・
にーちゃん・・・ねーちゃん・・・
じーちゃん・・・ばーちゃん・・・
なんで、誰もいないんだよ・・・?
落ち着け・・・大丈夫、みんなはオレを捨てたりしない・・・
大きく息を吸い込んで、不安に押しつぶされそうな心を落ちつける。
そうだ、小宮山!!
なんで病院にいるのかわかんないけれど、こんなところで寝てる場合じゃない・・・
小宮山が待ってるかもしんない・・・
そう思ったら、いてもたってもいられなくて、腕についてる点滴を引っこ抜くと、あたりを見回して自分の服を探す。
流石にガキの頃と違って、病院を抜け出すのにパジャマのままって訳にはいかなくて・・・
ベッド脇のロッカーで服を見つけると、急いでパジャマから着替える。
「あ!、英二!!、あんたなにやってんのよ!!」
カラカラと病室のドアが開いて、ねーちゃんの怒鳴り声が聞こえた。
ヤベッて思って、慌てて部屋を飛び出そうとしたけれど、素早くドアを塞がれてしまって・・・
「ねーちゃん、見逃して!、オレ、どうしても行かなきゃなんないんだ!」
「なに馬鹿な事言ってんのよ!あんた、風邪こじらせて肺炎で入院させられてんだからね!大人しく寝てなさい!」
そのうち、点滴を外したことで看護師さんもきちゃって、大人しく寝てないなら拘束しますよ!って怒られて、結局、ベッドに戻るしかなくて・・・
「もう24時間交代で監視するからね!」
ギシリとパイプ椅子を鳴らしてねーちゃんが怖い顔をする。
小宮山・・・
病室の窓から見えた空は、相変わらず厚い雪雲に覆われていた。