第109章 【カラッポ】
キンと張り詰めた冬の空気・・・
はぁ・・・と大きく息を吐くと、あたりが白く染まる。
見あげれば今にも落ちてきそうなくらい重そうな雪雲が空一面に広がっていて、雲の代わりに白い粉雪が舞い落ちてきた。
公園の木々や芝生が薄らと白くなっていて、ホワイト・クリスマスかぁ・・・なんて、その景色をぼんやりと眺める。
♪~
携帯のLINEが着信を告げて、慌ててディスプレイを確認する。
そこに映し出された名前に、ガクリと肩を落としてため息を漏らす。
時間切れで止まった通知音・・・
ゴメン、ねーちゃん・・・
きっと心配して通話をくれたねーちゃんに悪いなって気持ちはあるんだけど、今は小宮山以外の通話には反応する気にならなくて・・・
分かってる・・・小宮山が連絡をくれるはずなんかないんだ。
分かってるけど・・・それでも携帯がなれば、もしかして?と思ってしまうし、気がつけばこの公園の東屋に来て、ずっと小宮山が来るのを待ち続けてしまう。
「ああ、やっばりここにいた!」
数分後、心配したねーちゃんが迎えに来る。
帰るよ!、そう言ってオレの腕を引っ張るから、慌ててその手を引いてそれを拒む。
「あんた、熱あるくせになにやってんの!風邪こじらせたらどうするのよ!」
「んなの、なんでもないよ・・・小宮山が来るかもしんないもん・・・」
先日、小宮山に謝りに行って、でも許してもらえなくて、目の前で不二を選ばれて・・・
その後、ずっと外にいた影響で、次の日からしっかり風邪を引いてしまったようで・・・
だけど、熱でぼーっとする身体なんてどうでもよくて、ここに来ることが最優先で・・・
「来るはずないでしょ!いいから大人しく家で寝てなさい!」
もう一度、強くひかれた瞬間、ぐらりと空が回った。
英二!!、ねーちゃんの叫び声がやけに遠くで聞こえた。
あれ?、そう思ったけれど、あたりが真っ暗になって、そのまま、意識が遠のいていった。