第108章 【セイナルヨルニ】
ハッとして口を手で覆うと、目を見開いて私を見下ろしている周くんと目が合った。
その瞬間、ゆっくりと伏せられて、そのまま私の上から下りると、ベッドへと顔を埋めた。
「・・・ごめんなさい、私・・・」
謝れば済む問題じゃない・・・
だって、周くんだって気がついてる・・・
私、ただ呼び間違った訳じゃない・・・
「ゴメン・・・今日は送れないから・・・気をつけて・・・」
謝る周くんの声は震えていて・・・
その声に胸が潰れてしまいそうになる・・・
「・・・ごめんなさい・・・」
周くんが謝ることじゃないのに・・・
私が最低なのに・・・
慌てて着崩れた服を整えると、そのまま周くんの部屋を飛び出した。
部屋のドアを閉める直前、チラッと視線だけ振り返ったけど、周くんはベッドに顔を埋めたままで・・・
ごめんなさい、周くん、本当にごめんなさい・・・
零れ落ちる涙、一緒に溢れるのは、周くんへの罪悪感ともう一つの感情・・・
英二くん___
夢中で走りたどり着いたのは、あのいつもの公園。
ハァ、ハァ・・・切れる息で東屋のベンチに倒れ込む。
ごめんなさい、周くん・・・
ごめんなさい、英二くん・・・
私、なんてことしてしまったの・・・?
私がもっと強ければ、こんなに弱い人間じゃなければ、誰も傷付けなくて済んだのに・・・
英二くんを一緒に支えるって口先だけで、大きなことを言っておいて、結局、その心の傷を受け止めきれなくて、私だけが傷ついた気になって・・・
周くんの優しさに甘えて、その気持ちを利用して、自分の気持ちを勘違いして、一番最低なタイミングで本当の気持ちに気がつくなんて・・・
あの日、せっかく謝りに来てくれたのに、一方的に話を終わらせ拒んだ時の、呆然とした英二くんの顔・・・
ベッドの中で思わず声にした英二くんの名前に、傷付きショックを露わにした周くんの顔・・・