第108章 【セイナルヨルニ】
ドキドキ、する・・・
ううん、バクバクする・・・
「クスっ、まずはいつも通り、キス、しようか?」
覚悟をしてきたつもりだったけど、いざその時が来ると、緊張で身体が固くなってしまって・・・
そんな私に周くんは優しく微笑んでくれて、それからふわりと抱えてベッドへに座らせると、いつものように触れるだけのキスをする。
「璃音、好きだよ?」
髪を掻きあげ、耳元で囁かれる。
周くんの低音ボイス・・・とても甘い・・・
そのまま、はむっと耳たぶを甘噛みされて、それから頬に移動し、また唇に・・・
すごく優しい・・・
繰り返されるキスも、私の名前を呼ぶその囁き声も、髪や頬を滑らせる指使いも、何もかも・・・
私がリラックスしたタイミングで、キスの雰囲気が変わる。
それを素直に受け入れ、周くんの首に回した腕に力を込める。
周くん・・・大好き・・・
英二くんに捨てられて、ボロボロになった私なんかのことを、好きだって、大切だって言ってくれる・・・
そんなこと言って貰える資格なんかないのに・・・
私なんて、英二くんにいらないって捨てられた、お下がりなのに・・・
ドクン___
その瞬間、心臓が大きくざわめいた。
周くんの身体が傾き、そのままマッドへと沈められる。
上から角度を変えて重ねられる唇・・・
服の上から包まれる胸の膨らみ・・・
「璃音・・・璃音・・・」
ドクン、ドクン___
耳元で繰り返される呼び声・・・
その度に、大きくなっていく心臓のざわめき・・・
どうして・・・?
周くんが夢中になってくれているのに・・・
私、周くんが好きなのに・・・こんなに好きで、大切に想ってるのに・・・
「・・・え、いじ、く、ん・・・」
思いとは裏腹に、私の口を着いたその名前は、
今、私を包み込んでくれている、
彼のものではなかった____