第108章 【セイナルヨルニ】
「本当にありがとう、大切に使わせてもらうよ。」
「・・・いえ、やめた方がいいです、バカにされちゃいます・・・」
そんなことないよ?、そう言ってクスクス笑う周くんの前で、そんなことあります、なんて言って頭を抱える。
本当に周くんの笑顔はいつものことだけど、本音なのか建前なのか分かりにくくて・・・
周くんは私が作ったお料理も、このリストバンドも、とんでもない出来なのに、いつも笑顔で喜んでくれて・・・
でも、本当は、相当無理してるんじゃないかな?って申し訳なくなる・・・
ヒヤリ、突然首に感じた冷たい感触に驚いて肩を跳ねさせる。
それから、すぐ後ろに周くんの気配・・・
え?って思って振り返ろうとしたけれど、今度は胸元にキラリと光るシルバーの飾りに目を見開く。
これって・・・
「これは僕から。」
「そんな!、こんなの、受け取れませんよ!」
だって、一目見ただけでわかる。
このモチーフは有名ブランドのクリスマス限定ネックレス・・・
素敵だなって雑誌に付箋を貼って眺めていた。
お値段も素敵すぎて、とても手が出なかったけど・・・
どうして・・・?
私、周くんにそんなこと一言も言わなかったのに・・・
「いいんだよ、僕が璃音にあげたかったんだから・・・それに僕は璃音から一番大切なものを貰うしね?」
ヒンヤリとした感触がなくなった頃、その首筋に感じたのはとても暖かい感触・・・
ううん、とっても熱っぽい・・・
周くんの唇・・・
それにどんな意味があるか分からないほど、私はもう純粋じゃない・・・
「・・・あ、あの・・・」
「嫌なら、今、言って?、これ以上進むと、今日は止まれる自信ないから。」
私を後ろから包み込む周くん・・・
嫌、なわけない。
周くんは私をずっと支えてきてくれた・・・
辛いときも、幸せなときも、いつも側で私の気持ちに寄り添ってくれていた・・・
嫌、なんてありえない。
答えの代わりに振り返ると、しっかりと周くんの首に腕を回した。